歯科恐怖症

通院が困難なほど歯科医院が怖い

歯の治療をする女性

世の中には幼少の頃のトラウマが原因で歯科恐怖症(デンタルフォビア)と呼ばれる精神疾患になる人も多く、治療を受ける患者だけでなく治療をする側の歯科医師や歯科助手をも困らせて悩ませています。歯科恐怖症とは閉所恐怖症や先端恐怖症などと同様の精神疾患で、自分の力でなんとか克服しようとしてもどうにもならない恐さを感じてしまいます。虫歯があるので歯科治療が必要だと充分に理解しておりそのことは自分でもわかっているのだけれど、心をうまくコントロールすることが出来ずに歯科医院へ行くことに拒絶反応をするので本人も困ってしまいます。

実際はたいして痛くも無いし恐怖を感じるほどのおぞましい治療をされるわけではないのにどうして歯科恐怖症になってしまうのでしょうか。これには過去の体験によって歯科に恐怖を感じる単一恐怖と、人との関わり(人間関係)に対して異常に不安を感じる社交不安障害などが原因としてあります。過去の体験で大きな部分を占めるのは、子供の頃に歯医者さんへ行ったときに恐い思いをした記憶になるのではないでしょうか。そこで酷い目にあったわけでなくとも、歯医者さんでは子供は泣くものです。昔からそういうルールになっているんじゃないかと疑いたくなるほど、歯医者に治療を受けに来る子供のほとんどは泣きわめくのです。ギャーギャー騒いで手足をバタつかせて暴れる、そう相場は決まっているのです。おとなしく治療をうければ何も恐いことなどありはしないのに、理解しがたいほど抵抗して逃げ出そうともがく子供の姿は歯科医院でいつでも見られる光景です。これは日本(JAPAN)だけのことなのか、アメリカ(UNITED STATESOF AMERIKA)やイギリス(UNITED KINGDO)の子供達も同じように暴れるのかは知りませんが、本能的に何かを察知して嫌がるのでしょう。

結局治療自体で身体的ダメージを受けることは無く、それどころか健康な歯を取り戻すことになるのですが、泣き叫んで暴れまくった記憶は心に残ります。その記憶がトラウマとなり、大人になっても歯科医院へ行って治療するのが恐く、歯科医師は恐怖の対象としてしか見ることができないのでしょう。成人ならば治療で受ける多少の痛みもへっちゃらで麻酔の注射だってそんなに怯える程痛くは無いのですが、子供の頃のトラウマを克服することは出来ないのです。そのために大人になってからも治療中にデンタルショックを起こしてしまい、医院内で吐き気や貧血に悩まされる大きな患者さんもいます。こうなるともう通院するのも嫌になり、歯医者に通えなくなって虫歯が悪化してしまうというケースも増えています。それほどまでに幼少の記憶が心身に与える影響は大きく、虫歯の治療をする前にそちらの治療を先にしたほうがいいのではと考える人もいるほどです。これが1万人に1人や2人のことならたいして問題にもなりませんが、10人に1人や2人はいるのでなんらかの対策を練る必要があります。大人になっても虫歯の治療をするため歯科医院に通院するのは苦手だな、程度ならまだいいのですが、パニックを起こしてしまうので満足に治療を受けることが出来ない大人も少なくはないのです。患者の心の問題を克服するのが一番なのですがそう簡単なものではありません。なので歯科医院でも患者の不安を和らげるため、いろいろな対策をして安心して治療を受けてもらえるように配慮をするようになってきました。痛みを極力小さくしたり、強制的にリラックスさせたり、気を紛らわせるように会話に集中させたりと、歯科恐怖症の患者さんに対してはただ虫歯の治療をするだけではなく治療のためになにかしらワンクッションおいてスムーズに治療できるよう、少しでも穏やかな気持ちで治療を受けられるよう考えているのです。